こんにちは。京都オフィスの野間です。
さて、突然ですが、京都市は、2人以上の世帯によるコーヒーの支出金額が全国第1位(※)なのをご存じですか?「和」なイメージが強い方にとっては、意外かもしれませんね。
でも、京都にたくさんの歴史的建造物や古い寺社仏閣が残っているように、開店当初の雰囲気を大切に守っている喫茶店も多く営業しているんです。
今日は、そんな歴史ある喫茶店をいくつかご紹介したいと思います。
※総務省「家計調査(二人以上の世帯) 品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市ランキング(2019年(令和元年)~2021年(令和3年)平均)」より
築地
知る人ぞ知る名店です。
初めて訪れた時は、「日本にこんな世界観の喫茶店があるのか…!」と衝撃を受けたのを覚えています。
創業はなんと1934年。木屋町の路地裏にたたずむカラフルなタイル張りと、木彫りの看板の外観も素晴らしいですが、お店の中はさらに重厚な昭和モダンの雰囲気があります。
飾られている調度品は、現在のご主人の祖父にあたる初代店主が、趣味で集めた品々なんだそうです。古い時計やアンティークのお皿・絵画など、ひとつひとつがお店とともに年を重ねてきた重みを感じます。
このお店では、ホットコーヒーに生クリームを浮かべたウィンナーコーヒーが有名です。ムースやチョコレートケーキといったスイーツメニューも、昔ながらのビジュアルです。築地は、他にはない文化財級の世界観なので、ぜひ行ってみてください!
イノダコーヒ本店
こちらも京都のガイドブックには必ず登場するような名店ですね。
コーヒー豆の卸から始まったイノダコーヒは、戦後の物不足の中、コーヒーの生豆から焙煎した本物のコーヒーが飲める!と話題になり、京都市内の呉服業界の旦那衆や文化人に愛され、地域のサロンとして確固たる地位を築いてきたそうです。
京都市内には6店舗ありますが、人気の三条店は改装のためお休み中だったので、その近くの本店へ行ってきました。本店は、元呉服屋を改装した建物で、外観は町屋風ですが、中に入ると高い天井と、中庭に面した吹き抜けのフロアがあり、階段はらせん状…各所にステンドグラスの装飾があったりして、とにかくハイカラです。ぱりっとした蝶ネクタイ付の制服を着たウェイターさんが給仕してくれるところは、まさにサロン。
休日になれば、家族やカップルがおしゃべりを楽しんだり、1人で読書にふけるお客さんがいたり、今も市民や観光客の皆さんに愛されています。
定番の「アラビアの真珠」をブラックで頼んだ後に知ったのですが、元々は、最初からミルクと砂糖を入れて提供するのが「イノダのスタンダード」だったそうです。商談や歓談をしている間にコーヒーが冷めるとミルクがうまく混ざらないため、初めから配合してあげていたというのが始まりらしいのですが、多くの人が集うサロンらしい理由ですね。
今はブラックも選ぶことができますが、今度はミルク入りを頼んでみようと思います。
六曜社珈琲店
六曜社さんは、創業して70年近く、親子三代で営まれてきた喫茶店です。
なんと、初代のご主人が、終戦後に満州で屋台のコーヒー店を開いたのが始まりなんだそうです。軍の放出品のコーヒー豆を調達し、残留していた日本人の方へネルドリップで提供していたんだとか。京都の喫茶店のルーツが満州とは、歴史を感じますね。
現在は、三条河原町の建物の地下と1階で営業されています。学生運動が盛んだったころには、反体制の学生の拠点としても使われていたんだそうです。今はとても静かな雰囲気の中、お客さんが思い思いの時間を過ごしています。休日の日中は混んでいてなかなか入れず、相席になってしまうこともあるのですが、先日夜の時間帯に立ち寄ると空いていて、ラッキーでした!
灰皿にセットされたマッチ箱のオリジナルデザインがとても粋で、思わず写真を撮ってしまいました。
コーヒーと「本日のケーキ」を頼み、近くの丸善書店で買った本を読んでみたりなどしました。
昔の学生さんも、こんな風に時間を過ごしていたのかな、などと勝手に思いを馳せながら、とてもよい時間を過ごせました。
いかがだったでしょうか。お店ごとに、コーヒーだけでなく、お店づくりも個性がありますよね。流行や時代に流されず、独自の哲学や伝統を大切にしている喫茶店は、佇まいや備品、什器ひとつひとつにこだわりがあって、面白いんです。
最近は世の中のトレンドの移り変わるスピードが早いだけに、ブレないスタイルを守り続ける難しさと偉大さを感じてしまいます。誇りをもって丁寧に「仕事」に取り組む姿勢は、どの業種にも通じるものだと思うので、私も見習って、日々お仕事頑張ろう!と背筋が伸びる思いでした。
今日ご紹介したお店は、いずれも京都オフィスから(ちょっと頑張れば)歩いていける距離なので、仕事終わりにも立ち寄ってみたいな、と思います。
ちなみに、もっと京都の珈琲屋さんについて知りたい!と思った方には、田中慶一氏著「KYOTO COFFEE STANDARDS」がオススメです。京都の純喫茶の系譜から、それぞれのお店の歴史まで、細やかに解説してあって、とても読み応えがあります。今回も参考にさせていただきました。
シェルパの京都オフィス周辺には、他にも素敵な喫茶店が沢山あるので、また機会があったらご紹介しますね!それでは、さようなら~!